Heroタンパク質

ボディ・ワーカーはタンパク質を相手に仕事をしている、と言うことができる。ヒトのからだは、水分と脂質を除くとほとんどがタンパク質でできており、筋肉や骨、臓器、皮膚、爪などの主成分がタンパク質である。

特にボディ・ワークと切っても切れない関係にある筋肉では、水分を除くと約80%がタンパク質からできている。従って、からだの仕組みを組織ではなく組成で見ると、ボディ・ワークはタンパク質を相手にしていると言える。

私たちのからだは、老化や過酷な使い方をすると硬くなり融通性が損なわれて、ボロボロになり、最後は死滅する。部分的な死滅による不具合や個体そのものの消滅である。そんな事は人類にとって何万年もの昔から経験として分かっていた事で、だから不老不死の妙薬が流行ったり、医学が進歩したり、私たちのようなボディ・ワーカーがいる。

一方同じ生き物でありながら、地球上の生物とは思えないほどの過酷な環境に耐える生き物がいる。クマムシである。海、山、熱帯のジャングルから南極まであらゆる場所に棲み、私たちの身の回りのちょっとした池や道路脇のコケの中にも見つけることができるらしい。最も、寿命そのものは2ヵ月程度らしいが。

なぜ、この生物は過酷な条件下に置かれても生きながらえるのか。それは、体を構成する高分子たちが破壊されずに、生存している状況と同じ位置関係(構造)で固定された状態でいられるからだ。(受け売りです。)

ここからが本題です。

2020 年6月5日の日経に「Heroタンパク質を発見」と言う小さな記事が掲載されました。一般にタンパク質は決まった形をとっていて、熱を加えると固まる性質があるが、熱を加えても固まらないタンパク質がどの動物にも存在する。クマムシなどでは従来から存在が認識されていたけれど、普通の環境で生活する私たち人間などのからだにも同様に存在することが今回確認できた。

タンパク質が熱で固まる性質は、茹で卵の白身で確認できる。タンパク質は本来分子レベルで複雑な立体構造を持っている。この複雑な構造があるからこそ、特定の性質を持ちからだの重要な構成要素であるのですが、一方では加熱によってこの複雑な構造が崩れやすい。

でも、熱を加えても固まらず、構造が変形しないタンパク質がクマムシだけではなく人間や他の生物も持っている事が発見された。しかも、筋肉などを構成する普通のタンパク質を安定させ、変形や凝縮から守る働きをする。

耐熱(Hear-resistant)かつほとんど機能が分かっていない(Obscureな)タンパク質 : Heroタンパク質

解明はこれから、との事です。従って、勝手な妄想が許されるならば、からだ硬い方への処方や、老齢化を遅らせるなどに、このタンパク質を解明する事で光がさして、これからのボディ・ワークのアプローチの方法や位置付けが変わるのではないでしょうか。

参考資料 :