なぜ、能動的なのか

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からだの動きには能動的な動きと、受動的な動きがある。能動的な動きは、からだのその箇所を自らの意思で動かそうとする事で、関連する神経支配を活性化できます。神経支配を活性化すると、からだの操作がスムーズに思い通りにできる。

私の観察では、多くの方は思い描いた通りにはからだが動いていない様に見えます。あるいは、この様な動きをして下さいと言われ、動こうとして初めてからだが思うように操れない事を実感する事にもなる。若い方にもそのような傾向が見られるが、年齢を重ねるとより顕著にそれは現れる。従って、日頃からからだの特定の「そこ」を意識して動かそうとする行為が大切となります。

Active Mobilization (Mobilization : 稼働)

からだの「そこ」を意識して動かそうとすると、ピンポイントでそこだけで動く事はできず、必ずからだの各部位はつながり連動する。必然的にからだの広めの範囲を巻き込む事になる。「そこ」を意識してからだを操り、近隣の部位を巻き込んでスムーズな動きを実現する行為を「Active Mobilization」と呼ぶ事にします。特定の関節を意識しながら、一方ではからだはつながり、互いに補完しあっている事を理解し、結果として広範囲のからだを巻き込む事でスムーズな動きが完成する。

背景の認識 :

乳幼児は自分の行動に制限を設けていない。成長するに従い、社会通念、自らの美的意識、反復動作を要求する日常活動などで稼働範囲を狭め、あるいは便利な補助機能を持った器具・道具・機構の利用で自ら工夫しなくても生活できるため、からだの操作意識を狭めている。

一方、地球誕生からの長いスパンで見ると地球上の自然環境は温暖化、氷河期などがの変化が発生し、人類はその変化を受け入れて生命活動を何万年から何十万年も続け、その中で完璧ではないにせよ、生存できるより良い機能を獲得している。この様に人類の生きようとする力(生命力)は、地球上の環境変化に従って少しずつ変化してきたと言える。

近年では、自然環境の変化だけではなくて、人類自らが生活環境をダイナミックに変えるようになる。特に、動力を人力・動物力から蒸気機関などに置き換えた産業革命以降には、人間の非弱さを補う様な社会構造の変化の速度が急激となる。からだの構造や機能が原始からさほど変化していなのに、周りの生活環境の変化が急速に進んで現在に至る。そこにあるのは、肉体的にも精神的にも社会の変化について行けない人間である。

現在の社会構造を人間は総じて好ましいと認識しているが、一方で、我々の肉体は自分が獲得済みの機能と社会構造とのギャップを埋められないままでいる。その差を埋めようとからだとこころは自らの補完機能を駆逐して様々な努力を続けるが、ギャップはあまりにも深く埋められない。そして、肉体的、精神的な不調が表面化している人々がいる。

Active Milizationの特徴 :

一般に筋肉と呼ばれている組織は、筋線維と結合組織から構成されている。筋線維は収縮する機能のみを持つが、一本毎に結合組織でくるまれ、束ねられ、一定の単位にまとめられ、骨膜と繋がり骨に付着して初めて筋肉としての働きをします。この様に結合組織が筋肉を作りあげている。さらに、各筋線維(筋細胞)は結合組織を介して血液から栄養を受け取り、筋細胞の呼吸(細胞呼吸) で生成した老廃物を結合組織に排出します。また、結合組織は筋肉内の神経線維の居場所でもあり、関節の構成要素でもある。

以上の理由により、Active Mobilization(Active M)は、からだの構成要素としての結合組織を重要視します。

Active Mはからだの対象部位を能動的に動かす事で、直接的にそこの結合組織内での栄養素の循環を改善して、組織硬化の改善や予防をしたり、神経組織への不要な刺激も和らげます。その結果としからだの動きが良くなり、痛みなどの不快感や筋線維の働きも改善されます。

ちなみに、多くのストレッチ運動は対象部位と連動する近隣部位を能動的に動かし、対象部位そのものは受動的に引っ張られ、その結果筋肉や腱・靭帯を引き延ばして状況の改善を図ります。この違いを十分理解してActive Mを行うと初めて効果を実感します。

組み合わせの効果 :
● 膝から足先まで、深部に至る施術
● 肘から手首の施術
● 能動的に部位を動かす事で神経支配を行き渡らせ、本来の肉体の動きを取り戻すActive Mobilization
対象部位 : 股関節、骨盤を中心 および 肩甲骨、鎖骨を中心
● 足元・くるぶし・膝・pelvic girdle・背面・shoulder girdle・首・頭頂まで、contra-lateral連動構築
● ネックワークによる全身の調整

からだを自在に操れるようになると、脳がリラックスするだけではなくて、呼吸が深くなり、からだの全ての細胞ものびのびと活動を始める。それが『健康』です。


繰返しになりますが、アイダ・ロルフが着目した『結合組織』、『重力』は、どこにでもある、いつでも身近に在る、直ぐ手に入る素材です。すなわち『生命活動』とはどこにでもあって、手に入れやすい素材を極限まで活用する事である、と言う事ではないでしょうか。

その様に理解して、私の活動が始まります。


《掲載内容の構造》
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