基本のエクササイズ

< 基本のエクササイズ>

からだの仕組み上、骨盤周りと肩甲骨周りは車の両輪に例えられる。股関節を含む骨盤は下半身と上半身を連動させ、肉体の活性やバランス維持に関連、また内臓の働きを安定させる。肩甲骨周りは呼吸のし易さと呼吸の深さとに直接関わり、身のこなしのスムーズさをサポートし、外界を正しく認識できる様に視野の安定にも寄与する。そして、視野の安定は精神の安定につながる。

『特定の部位を意識して能動的に動かす事』が、からだの神経支配を明確にし、本来の肉体の動きを取り戻すためのActive Mobilizationです。エクササイズを行う過程ではからだ中の構成要素(皮膚、筋肉、靭帯、腱、神経、結合組織、関節、骨格)が連動する事になります。ヨガなどの様に、からだを特定のポーズ、型に当てはめる事が目的ではありません。からだの要求に従って様々なバリエーションを生まれる。『定形のないエクササイズ』です。

・部位 : 股関節、骨盤を中心
肩甲骨、鎖骨を中心
・足元・くるぶし・膝・pelvic girdle・背面・shoulder girdle・首・頭頂までのcontra-lateral連動

股関節、骨盤を中心のエクササイズ
5つの初動姿勢からエクササイズを始めます。

5つの初動姿勢 :
1) 床に座骨を付けて座り、脚は足裏を合わせる。(合蹠[ガッセキ]の姿勢)
2) 床に仰向けに寝る。(仰臥の姿勢)
3) 床に座り、脚を前に投げ出す。(長座の姿勢)
4) 床に座骨を付けて座り、両脚を伸ばして開く。(股割りの姿勢)
5) 正座の姿勢から、腰を両脚の間に落とす。(割座の姿勢)

姿勢1)、3)、4)、5)では、仙骨を意識して下腹(へそから恥骨まで)を前に突き出す様なイメージを持つ。仙骨につながる背骨が逆S字状になり、胃腸が圧迫されず、胸が開いて呼吸が自然に深くなる。(腰を立てた状態)

当エクササイズはヨガの様に特定のポーズにからだを当てはめる事を目的としない。様々な動作を行う過程で、からだの構成要素(皮膚、筋肉、腱、靭帯、神経、結合組織、骨、関節)は連動して相互の位置関係が変化する。
その連動して変化する事がエクササイズの目的と言えるので、基本を守りながらからだが動きたいと要求する動作を積極的に取り入れると良い。頭で理解したり、考えたりするのではなくて、『からだが動きたいと要求する動作を感じるセンサー』を養う事が大切。

1) 床に座骨を付けて座り、脚は足裏を合わせる。
左右の股関節に意識を持っていき、左右いずれかの股関節を床方向に動かす(床に押し付ける)意識を持つ。次に反対側の股関節を動かす意識を持つ。最初から動きを感じる場合もあるが、股関節を動かす感覚を持てない場合もあるが、あまり気にせずに行う事が重要。

このエクササイズは、当時私が悩んでいた右股間の痛みをなんとかして無くしたいと考えた事が発端でたどり着いたものです。長い間真向法と言うストレッチを行なっていましたが、徐々に右股関節の周辺に痛みが出始めました。私の脚は左右の太さがかなり違っており、左が明らかに太い。そのアンバランスのために長い間に右股関節周りに無理をさせていた事が発端ではないかと推測しています。問題の個所は股関節そのものでは無く、恥骨右側と膝を連動させる筋の付け根部分です。ストレッチと言う概念を捨て、骨膜・腱・筋のグループが自らの動きで自分の柔軟を取り戻すと言う図式にたどり着きました。

十分に動きが出てくると、股関節の近隣の臀筋が活発に動く事が実感できます。
腰を立てながら次第に下腹から姿勢を前傾させて、交互の押し付ける動作を続けていると、最後には上体が自然に床と並行、あるいは床に胸が着く様になる。

2) 床に仰向けに寝る。
1) の動作をした後では、大きく伸びがしたくなるので、仰向けの状態でからだの要求に従う。
両脚を伸ばしたまま、左右の脚を体側に沿って交互に引き上げる(スライドさせる)。次に、床に踵をつけたままで膝を徐々に引き上げながら、引き続き交互のスライド動作を行う。

両方の踵が骨盤横に来たら、座骨、踵は相変わらず床につけたまま両膝をそろえて左右に倒す。最終的には左右のいずれかの膝が床に着く様になり、もう一方の膝はそれに従う。上体は自然に左右に捩れる事になるが、できるだけ両方の肩甲骨は床につけたままとする。

さらに、踵を床に着けて両膝を立て、一方の膝をもう一方の足首まで倒す。踵、骨盤はできる限り床につけたままとする。

3) 床に座り、脚を前に投げ出す。
股関節を起点として、左右いずれかの脚・膝・足を股関節から左右に回転させる。この動作では、恥骨や座骨に付着する腱が緊張している状態を確認する事になる。片方が終わったらもう片方も同様に行う。

さらに、腰を立てたままで下腹からからだを前に倒しながら、同じ動作を行う。最後には上体が自然に床と並行、あるいは床に胸が着く様になりながら、同じ動作ができるようになる。

4) 床に座骨を付けて座り、両脚を伸ばして開く。
腰を立て座骨と踵をを床につけ、股関節を軸として股関節から膝を交互に内側に倒す。最初は真っ直ぐに脚を伸ばして行い、踵は床に付けたままで徐々に膝を立てておこない、腰は立てたままさらに腕で膝を脇腹に引き寄せながら(下腹と大腿部がくっつく感じで)、交互の動作を行う。

次に、最初の姿勢に戻る(座骨を床につけたまま腰を立て下腹を突き出し気味にして、両脚を広げて座る)。股関節を軸にして片方づつの脚・膝・足を前後に回転させる。開脚の度合いは最初は狭くても良いが、次第に大きく開いて行う。この時、骨盤、上半身も連動して自然に捻れる。

さらに、最初の姿勢に戻り両脚を広げて座る、股関節からももを交互に上げる。次第に下腹から前傾姿勢をとりながら、引き続き股関節からももを引き上げる動作を行う。最終的には、下腹、胸が床に着き股割りの姿勢が自然にできる。

5) 正座の姿勢から、腰を両脚の間に落とす。
両方の股関節と膝を意識して、お尻を左右に振る。両脚の間で骨盤が左右に揺れ動く様になり、それにつれて腰から上半身も連動して軽快に動く。

少し上体を後ろに倒して、左右の膝を交互に持ち上げる。この時、上体を腕で支えるとからだは安定する。さらに上体を倒して肩甲骨まで床につけた状態で、股関節を基点として左右の膝を交互に上げる。この時膝はできるだけ閉じる。

起き上がりは無理なく、左右のいずれかにからだを捻って立つ。あるいは、仰向けのままで、そのまま起き上がる。

肩甲骨、鎖骨を中心のエクササイズ
鎖骨は肩甲骨を動かす事で自然に連動するため、肩甲骨の動きを意識する。肩甲骨は鎖骨と関節しているが、それ以外は肋骨の背中側に浮かんでいる状態のため、両外側、両内側、上、下及び上下の斜め方向に肋骨に沿って滑るように動く事ができる。

従って、どう動かしても良いと思います。例えば、大リーグの前田健太さんが肩(肩甲骨も含めて)グルグル回すやり方でも、肩甲骨はかなり動いていると思います。

私は補助的に部屋の入り口のフレームを使っています。ドアを開けて真ん中に立ち、入り口のフレームに両手指を軽く添えて、肩甲骨を開く(左右に肩甲骨を押し出す)、閉じる(真ん中に寄せる)、上や下ににスライドさせる。両肩甲骨を同じ方向に、あるいは逆向きに動かしたり。入り口のフレームに軽く添えた手の位置を上の方にしたり、下の方にしたり、と色々変えています。指を軽く添える事で肩甲骨の位置感覚が鮮明になります。なお、入り口のフレームを固く掴むと、腕、肩、上半身の自由度がなくなるため、軽く触れるだけにする。

肩甲骨を動かすと、自然に肋骨、背中全体、さらに骨盤から足までが連動して動くので、結果的に肩甲骨を含めてからだ全体がスムーズに動く事になる。仁王立ちになって行うのではなく、足元から全身を柔らかくくねらせるようにして、肩甲骨を動かすイメージです。

contra-lateral連動の構築
Contra-Lateralとは相対応する側面と言う意味で、例えば右側の腰・脚・足と左側の背中・腕との関連を言います。身近な例は歩行です。右脚を前に出し左脚が後ろに残ると、骨盤が右が少し前/左が後ろの右半身に、その上の上半身はそれに抗して左半身になる。これがからだの左右の連動です。なおこの動きとは別に、日本では「なんば」とってからだを捻らない身体の動きも認識されています。

歩行など日常生活で頻繁にからだの「捻り」を活用していますので、 Contra-lateralな動きの連動はとても大切です。最近気になるのは、多くの方々の歩行です。脚の前後の動きと腕の前後の反動のみで、その間の胴体部分の動きがなく、からだ全体を使った捻りが見られない。

私はこの連動をからだで確認する目的で、相撲の「てっぽう」を取り入れています。
相撲の「てっぽう」は相撲部屋の土俵の際に直立させて埋めこんで丸太(てっぽう柱)で行われます。両脚を開いて柱に相対し、左腕を突き出して柱を手の平でたたくように押し、同時に左脚を前にスライドさせる。

この時、右足から伝わる地面の圧は、骨盤を経由して脊柱の左側を通り、左肩甲骨、左腕、左手の平から柱に到達します。その次は、左足、骨盤、脊柱右、右肩甲骨、肩、手から柱です。

私がこの時に気がついた事は、柱に圧が伝わる時の感覚が左右で違っている事でした。右手はピタっと柱に吸い付く感覚ですが、左手は何かボンヤリした感覚で、しかも体勢が不安定です。左の手をつく位置、角度、手の平の開き方などから始まって、上体の動き、右足の踏ん張り加減などを調整してきました。左右の差の違和感がなくなり、等しくピタっと柱に吸い付く様になる時もありますが、まだ完璧とは言えない状況です。

ちなみに、我が家にてっぽう柱は有りませんので、公園の立木で代用しています。硬い木の皮にはとても素手では耐えられないので、手袋をはめて行なっております。

《掲載内容の構造》
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