ZERO to ONE 3

第5章
偉大な企業かどうかは、将来のキャッシュフローを創出する能力で決まる。

今日の企業価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローの総和だ。(未来のキャッシュフローを現在価値に割り戻す : デスカウントキャッシュフロー)

  • 低成長企業 : 価値の大半は短期のキャッシュフローからくる。
  • 高成長スタートアップ企業 (テクノロジー企業) : 最初の数年は持ち出し。現在の企業価値は少なくとも10年から15年先のキャッシュフローから来ている。

価値ある企業となるには、成長するだけではなく存続しなければならないのに、多くの起業家は短期的な成長しか見ていない。

短期成長をすべてに優先させれば、自問すべき重要な問いを見逃してしまう ➖ 「このビジネスは10年後も存続しているか」 数字はその答えを教えてくれない。むしろ、そのビジネスの定性的な特徴を客観的に考えてみる必要がある。

  • 独占への近道は存在しない。自分のビジネスの分析をする視点
    プロプライエタリー・テクノロジー (proprietary technology 独占的テクノロジー)
    ビジネスのいちばん根本的な優先性、これがあれば自社の商品やサービスを模倣されることはほとんどない。
    例 : Googleのアルゴリズム : 検索エンジンの信頼性・盤石さ、スピードの速い検索結果表示、確度の高い検索ワードの自動候補表示

プロプライエタリー・テクノロジーは二番手よりも10倍は優れていなければならない。(本物の独占的優位性をもたらす)
10倍優れたものを作るには、まったく新しい何かを発明するのがいちばん。
既存のソリューションを劇的に改善。10倍の改善。

  • ネットワーク効果
    利用者の数が増えるにつれて、より利便性が高まる。規模

ネットワーク効果を狙う企業は、かならず小さな市場(小さ過ぎて事業チャンスがある様には見えない)から始めなければならない。

  • 規模の経済
    独占企業は規模が拡大すればさらに強くなる。(例 ソフトウェアの開発、反対に多くの企業では規模の拡大によるメリットは限定的、例えばサービス業では独占は難しい)

規模拡大の可能性を最初のデザインに組み込むのが、優良なスタートアップ。

  • ブランド / ブランデイング
    ブランドは企業に固有のもので、強いブランドを作ることは独占への強力な手段となる。(例 アップル)

本質よりブランドから始めるのは危険だ。ブランデイングだけではテクノロジー企業は築けない。

独占を築く : ブランド、規模、ネットワーク効果、テクノロジーのいくつかを組み合わせる事が、独占につながる。それを成功させるためには、慎重に市場を選び、じっくり順を追って拡大しなくてはならない。

1. 小さく始めて独占する。
大きな市場よりも小さな市場の方が支配しやすい。(例えば、特殊な小さな世界/集団)

2. 規模拡大
ニッチ市場を創造して支配したら、次は関連する少し大きな市場に徐々に拡大して行くべきだ。
ただし、規模拡大には隠れた障害が存在することもある。
徐々に規模を拡大するには自己規律が必要になる。

大成功している企業はいずれも、まず特定のニッチを支配し、次に周辺市場に拡大すると言う進化の過程を創業時から描いている。

3. 破壊しない
新たなテクノロジーを使って低価格商品を開発し、それを次第に改善して最終的に古いテクノロジーを使った既存企業の高価格市場まで奪ってしまう事を言う。

本当に新しいものを作りたいなら、古い業界を意識するより、創造に力を注ぐ方がはるかに有益だ。既存企業との対比で語られるような会社はまったく新しいとは言えないし、おそらく独占企業にはなれない。

4. ラストムーバーになる
先手必勝とよく言われるが、先手は手段であって目的ではない。
本当に大切なのは将来キャッシュフローを生み出す事で、最初の参入者でもライバルがやってきてその座を奪われたら意味がない。最後の参入者になる方がはるかにいい。
特定の市場でいちばん最後に大きく発展して、その後何年、何十年と独占利益を享受する方がよい。

小さなニッチを支配し、そこから大胆な長期目標に向けて規模を拡大しなければならない。
勝ちたければ、何よりも先に終盤を学べ。 (チェス)