イワシのゴマ漬け 3

背黒が上がれば9時頃にはほぼ開店です。水揚げから追跡している私は、大概列の先頭か2番目で待ち受ける。

地元の人はその頃ようやく店に来たり、電話で水揚げの確認をしているが、松戸から来ている私はそんな事ができません。家に戻って、早速背黒の頭とワタを取る下ごしらえが待っています。

10キロだと昼から夕刻、イワシの大きさによっては電気を灯して更に遅くまでかかりますので、昼前には家に着いている必要が有る。9時半頃にはイワシを手に入れて帰路につけますし、その前ににイワシの水揚げが有るかを港で確認しなくてはいけないし、通勤ラッシュとはぶつかりたくないし。あれこれ時間を逆算して早朝5時には家を出発、と言うスケジュールです。

(背黒)イワシのゴマ漬けをいつ頃から自作する様になったのか。記憶が無いのですが、片貝漁協の直営店ができて直ぐであることは間違い無い。なぜ自作しようと思ったのか明確な記憶はありません。観光客相手に魚やがんもどきなどの販売店が集まっている銚子の「ウオッセ」にはイワシのゴマ漬けが売られているので、最初はそこで購入してみたのが始まりで、美味しかったから自分で作ってみたいとなった。そんな事ではないでしょうか。

最初にイワシを購入して自分で始めた時の事は、薄らと記憶に有ります。台所の流しで行い、下ごしらえに手間取り結構時間がかかった事だけ覚えています。その後どの様に処理して、美味しかったのかどうだったのかはあいまいです。

2年目は家の外にある流しの際で下処理。処理が進まず、電灯を引いてかなり遅くまでかかり、そのうちに横に有るエアコンの室外機が暖房を入れた事で回り出し、ファンの風が寒くて往生しました。寒さに震えながら、小さなイワシを押さえる左手の親指を包丁で切って赤剥けの状態。それでも手に入れたイワシを無駄しない様に、必死でやり遂げました。

3年目は少し状況が分かってきたので夏頃から作業手順、備品などの構想を練り始める。庭に有る物置小屋の中にイスとまな板を置く台を設置。台と言っても、前からあったクーラーボックスで代用。その頃の包丁は釣りに持っていく様なペラペラの小さな物で、いくら良く研いでもさほど鋭利ではない。それに加えてイワシの油で切れ味が鈍くなる。いろいる工夫した内には、味海苔が入っていた缶についている、ビニール製のチョット硬い中蓋を半分に切って扇型の親指保護サックの作成があったり、作業小屋に電灯を引いて夜戦にも備えた。

でも、実際やって見るとクーラーボックスは高さが低すぎて、長時間の作業では腰が持たない。途中で何度も腰を伸ばして我慢の長時間作業は辛かった。

年をおう毎に作業環境はさらに進化の度合いを増してきます。