Myucroのからだ世界 4

細胞が遺伝子のコピー回数を数えていて安定数を維持する仕組みが有る事が、最近明らかになった様です。一見無尽蔵に新しい細胞を生み出しているように見える基底層の細胞にも、背後ではこの様なコントロールがなされています。

この部分のもう一つの特徴は、細胞と細胞の間のすき間が狭い事です。細胞間を満たす間質液がほとんど無くて密に詰まって並んでおり、細胞同士が強固に結びついてる事です。そのおかげで、一端を摘んで引張ても皮膚は破れることもなく、私達は普段は一枚のシートの様に扱う事ができます。横並びの細胞は、いく種類かの細胞間接着方法によってお互いに密に連結しています。

また、神経の終末がここまで来ており、体表でかゆみ、痛みなどを感じる事ができます。ただし、血管(毛細血管)はここまでは来ていませんので、上皮部分だけを傷つけても血は出ません。

ところで、天疱瘡(テンポウソウ)と言う国により難病に指定さてている病気をご存知のでしょうか。この病気は基底細胞間の接着に障害が発生する自己免疫疾患なのですが、私の友人が60代で発症して、今も苦しんでおられます。お手紙を頂く毎に容体を伺っていますが、とても大変なご様子です。症状が安定して安らかな生活を送ることができる様、念じております。

さて、皮膚は常に再生されている、と言う思い込みが私にはあったのですが、最近は皮膚のザラつき、ガサガサ感や、何か覆いがかかった様な、外気と直接触れていない様な、疎外された感じが有ります。特にそう感じる場所は手や顔で、思わず手を擦り合わせたり、顔を手のヒラで擦ったりしてしまいますが、それだけでは戻りません。それに、ボディワークをする身としては、手のガサガサが相手に不快感を与える事は避けなければなりません。

そんな訳で、クリームを使用する様になりました。チョット高級な馬油(バーユ)から程々の値段のものまで、いくつか試しました。先日(2019年3月)、Architecture of Human Living Fasciaを書いたJean-Claude Guimberteau の講演を聴きに行くと、協賛企業のブースに馬油の会社が来ていて、懐かしくてチョット話し込んでしまいました。

現在は、ニベアに落ち着いています。ベトつかずにすぐ吸収されてるのに、柔らかい感触がずっと残っていますので気に入っています。第一に値段が手ごろです。自分の皮膚感覚を適正に保つために、この様に男性でもある程度の年齢になったらスキンケアを行うと良いでしょう。

クリームを塗ると、空気と触れる時の皮膚の感触がソフトになるので、日常生活での感覚自体が柔らかくなります。老は自然に進行していくので、若い時代の感覚はいつのまにか消え失せて、その時の自分の状況が当たり前に感じられてしまいますが、クリームを使用するなどチョット工夫をすると若い時の感覚が蘇ります。何か覆いがかかった様な突っ張った感触ではなく、滑らかな、柔らかな肌を通じて外界を繊細に知覚する事ができ、それにより脳に心地よさが自然に伝わる。こうする事が認知症の予防にもなると考えています。

なお、上皮組織(epithelium)はからだの外形を覆う皮膚だけではなく、くちびる、口腔から胃、腸などの空気に接する体内内壁、さらに血管や体腔の内壁でもあり、役割も部位によって異なります。例えば私達が肌(皮膚)と言っている部分は、ホコリや酸性雨などの影響を減少させ、紫外線からからだを守るバリアの機能を持ちますが、腸管のように栄養源となる物質を能動的に吸収したり、粘液、ホルモンなどの分泌を司る機能を持った上皮組織もあり多彩です。

ガサガサの皮膚と言えば、皮膚の表面には細かなシワが有ります。歳をとれば本来のシワに加えて、皮膚のたるみによる凸凹も加わってさらに複雑な様相です。シワ自体は若い人にも有りますので、人間(ある種の動物たち)の本来ある性質と言えますが、最近読んだArchitecture of Human Living Fasciaの著者はこの点についてユニークな説を唱えています。

シワそのものは、内部のコラーゲン線維に起因する事自体は昔から言われていたことです。本の著者はそれに加えて、体内のコラーゲン線維は微細な3次元の多面体(polyhedron)を構成しており、皮膚のシワはその多面体の形状をそのまま示している、と述べています。

参考資料 :
細胞が反復遺伝子のコピー数を一定に保つ仕組みの解明 東京大学研究グループ 大学ジャーナル2019/1/12
表皮組織の構造と自己免疫性水泡症の分類 (株)医学生物学研究所[MBL]ホームページ