ウォーキングの科学 27

[P.68] インターバル速歩群の早歩きは、個人の最高酸素摂取量の70%以上の運動強度になるが、・・・・。すなわち、乳酸がでるようなややきついと感じる運動を・・・・。

本題と直接関連しないが普段から気になっている、酸素摂取(呼吸)・運搬(心拍)と運動の基本的事項の確認を行う。

酸素の摂取は安静時から強度の高い運動時まで、途切れる事無く常に行われている。と言う事は、好気的代謝は程度の違いは有るにしても、安静時、運動時(軽い運動から激しい運動まで)のいつでも行われている事を意味する。

呼吸 :

運動の強度が増すに従い呼吸回数が増える要因は、血中二酸化炭素の増加、血中pHの低下(酸性。健常な人の動脈血はpH7.35~7.45くらいで中性に近い)、体温上昇、運動による代謝の促進、低酸素(ヘモグロビンと酸素が結合した時に結合可能な酸素の量の低下)である。

細胞呼吸により血中のCO2が増加して血中pHの値が低下すると、延髄に有る中枢性化学受容器が感知する。また、酸素不足は頸動脈(頸動脈小体)と大動脈(大動脈小体)に有る末梢性化学受容器が感知する。

呼吸の調節は、延髄を中心として脳幹部の呼吸中枢で行われ、脊髄を経由して呼吸筋に情報が伝わり自動的に行われる。ただし、呼吸筋である横隔膜、肋間筋などは随意筋のため、大脳からの指令で肺を膨らませる(呼吸をする)、しないなどの意識したコントロールもできる。

心拍 :

心臓の拍動は洞結節(右心房付近に有るペースメーカー)の自動能(電気刺激が自動的に発生する機能)による固有心拍数(約100拍/sec)に対して、自律神経の支配が加わり決定される。安静時は副交感神経で抑制をかけているが、ひとたび運動をしようとした時点で、素早く反応し心拍数は速かに増加する。以降は交感神経の働きによる。

運動と運動強度/負荷:

安静座位時の酸素摂取量(VO2)を1METS(Metabolic equivalents)と呼び、3.5ml/kg/minである。運動強度が上がるに従い酸素必要量は増加する。低い強度の運動では酸素の需要量と供給量はほぼ一致するが、さらに運動強度を増して行くと酸素の摂取量が増えなくなる。この時点での酸素摂取量が最大酸素摂取量(VO2max)。これは、運動負荷時にからだが摂取できる酸素の単位時間あたりの最大値で、心拍出量、肺での換気量、血中ヘモグロビン量、骨格筋の酸素摂取能力などで決まる。

運動負荷が増していき嫌気的代謝が始まるのはVO2maxに達してからではない。解糖系代謝が始まると、副産物として乳酸が産生されるが、ある時点の運動強度から急激に乳酸が増える。この時点を嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold、AT、あるいは乳酸性[作業]閾値 lactate threshold、あるいは換気性作業閾値 ventilation threshold: 各々の測定方法の違い)と言い、VO2maxの40〜50%(資料によっては、50〜60%)の時点だ。

従って、70%以上と言うのは、かなりの強度の運動である事が理解できる。

参考資料 :