ウォーキング 15

ウォーキングの効果として、骨が丈夫になる(あるいは、現状の機能を維持できる)、が挙げられます。ただし、ウォーキングに限った効果では無いので、さまざまな運動の分野で同様に取り上げられています。

なお、どの様な仕組みで「骨が丈夫になる」のかについては、その過程を私が納得できる様に記述した記事(論文)はなかなか見つけられない。従って、以下は現時点での私の理解と言う位置付けです。

ピエゾ効果(piezoelectric effect、圧電効果とも言われる)と言われる分子レベルの現象が有ります。ピエゾ効果はさまざまな物資に現れますが、範囲を人体(脊椎動物)に限ると、体内に豊富に存在するコラーゲン線維(collagen fiber)の特性です。

コラーゲン線維はアミノ酸が多量に結合して、数珠つなぎになっています。 アミノ酸がお互いに結合する時には、「 – CONH – 」と言う結合形態(ペプチド結合 peptide bond)をとります。この結合に含まれているO (酸素原子)はマイナス、H(水素原子)はプラスの電気を帯びているために、双極子(dipole)が自動的にできあがります。

通常は沢山有るプラスとマイナス同士が釣り合っていますが、外部から力が加わるとコラーゲン線維の塊は変形する(歪む)ので、沢山集まった双極子が場所に応じて少しずつズレて、電気的な釣り合いの関係が崩れ、プラスの強い場所とマイナスが強い場所ができます。

ところで、骨は結合組織の一つの形態です。
結合組織は細胞(cell)、線維(fiber)、基質(ground substance)からできていますが、基質部分がリン酸カルシウムに置き換えられたものが骨です。

骨に外部から力が加えられると、含まれている線維(この場合は、コラーゲン線維)が変形してプラスの強い場所とマイナスの強い場所ができます。プラスの強い場所には破骨細胞(骨を吸収する細胞)、マイナスの強い場所には骨芽細胞(骨を構築する細胞)が活発になりますので、骨の新陳代謝が行われます。

ウォーキングでは、地面を踏む事で外からの力が骨に加えられるため、ピエゾ効果により骨の新陳代謝が促進され、その結果骨が丈夫になる(現状を維持できる)。

余談ですが、ウォーキングは色々な方向から力が加わりますが、一定方向の力がずっと加えられると、ピエゾ効果のためにその部分の骨が徐々に変形して行きます(より成長する部分と成長が阻害される部分ができて、骨の形が変わる)。

骨は一見固そうですが、実際には変形により形が変わる程度には柔らかい物質です。足の踵(カカト)が、後ろに飛び出しているのは、アキレス腱によってズット一定方向に(何千年も)引っ張られた結果だと言えます。私たちの大腿骨は真っ直ぐな一本の骨ではなくて、途中から斜めに伸びた形に変形して、股関節で骨盤につながっています。これも、何千年の間に、上体の重さを受けて、力学的に適正な形になった結果です。理想的な歩き易い形になり、人類にプラスの効果をもたらした例ではないでしょうか。

参考資料 :
骨代謝の仕組み – 骨の細胞とその機能 – 真野 博 久米川 正好
競走馬の骨組織と骨疾患 その3 軽種馬育成調教センター 調査役 吉原 豊彦
(馬が主題ですが、ピエゾ効果を分かりやすく記述しています。)

双極子 :
一対の正負の同じ大きさの単極子をわずかに離れた位置に置いたもの。(小さな棒磁石のN極とS極の様な関係)