真向法

真向法体操では「腰を立てる」事が、とても大切です。

例えば、第一体操は床に腰を下ろして、お内裏さまの様に足裏を合わせます。上体は起こしたままですが、この時お腹が凹んでいると、上体は背中が丸まり、肩先が前に突き出した猫背の状態(胸も凹み、アゴが出る)です。一方、腰を立てると下腹が少し前に出て、背筋が自然に伸び、肩先は自然に前後の中心に有り、頭がからだの上に安定して乗ります。

2つの状態を、あたかもレントゲン写真をからだの左側真横から撮った様に見てみます。
上から、頭骨(頭蓋骨)の鼻や歯が左を見ており、その下に頸椎(首の骨で全部で7個)、胸椎(肋骨が付いていている骨で、全部で12個)、腰椎(7個)、その下に仙骨・尾骨(骨盤の後方に有る、正面から観ると逆三角形の骨)が有ります。

頸椎は頭骨の接合部から胸椎の接合部まで、7個の骨が連なり、真ん中が少し左に膨らんでいます。その下の12個の胸椎は、頸椎との接合部から腰椎の接合部まで連なり、真ん中が少し右に膨らんでいます。7個の腰椎は胸椎との接合から仙骨の接合部までの連なりが、左に少し膨らみます。仙骨・尾骨はほとんど一体になっていますが、全体が少し右に膨らんでいます。したがって、背骨全体があたかもアルファベットのSの字の様に、上から左、右、左、右と交互にふくらみます。

真向法の第一体操で、お腹が凹んでいると、仙骨・尾骨と腰椎の接合部がより後方で水平になりるため、続く腰椎が直線的になり、背骨全体が右にふくらみます。
一方、腰を立てると、仙骨・尾骨は全体が右にふくらんだままでほぼ垂直になるため、腰椎との接合部分(仙骨底 bass of sacrum)は右斜め上がり(横から見て、接合面が右上から左下に傾斜)となりの、腰椎、胸椎のS字状のわん曲が保たれます。

多くの方は、この腰を立てる姿勢が取りにくく、上半身が背後に倒れそうになります。そんな時はお尻の後方半分にタイルをたたんで敷いて座ります。こうすると、脚は床に着いて、脚よりお尻(骨盤後方部分)が高くなりますから、仙骨・尾骨が垂直になり、背骨のS字が取りやすく、安定して座れるのです。

このタオルを敷く方法は、イスに座る時にも応用できます。イスに座っても前かがみになってアゴが出てしまうしまう方は試してはいかがでしょうか。スッキリとして、からだが安定します。

ちなみに、このタオルを敷く方法は、「名医とつながる! たけしの家庭の医学」でも紹介されていました。
「つまずき・転倒し易い」は、筋肉の衰えではなく、背骨がきれいなS字でなくなる事が関連する、と言った内容でした。

背骨のS字カーブが無くなると、歩幅が狭くなり、つまづいて転倒し易くなる事を、福島県立医科大学会津医療センター整形外科・脊椎外科教授の白土修先生が突き止めた、との事です。

真向法で「腰を立てる」を身につけると、良く言われている様に「股関節周りの運動機能改善」だけではなく、この様に「転倒防止」にもなると言う事なのです。

参考資料 :
真向法協会 ホームページ
つまづき・転倒を防ぐ 名医とつながる! たけしの家庭の医学 2018/07/24 朝日放送テレビ